精神科医で老人医療の専門家でいらっしゃる
和田秀樹先生の本をお手伝いしました。テーマは「介護」。日本はすでに超高齢社会(人口の21%以上が65歳以上の高齢者)ですが、2025年には団塊の世代が後期高齢者入りし、介護問題はますます大きくなっていくでしょう。そして統計によれば年間10万人以上もの人が介護のために離職しています。
仕事と介護の両立がそれだけ厳しいということですが、少子化が進み、労働人口が減る中、働き盛りの人々がキャリアを捨て、親の介護をせざるを得ない状況は、非常に残念なことです。一方で、親の老いから目をそらしたい、できれば先送りにしたいという気持ちが子ども側にあり、十分な準備ができていないのもまた事実ではないでしょうか。
私自身、介護保険の仕組みについて今まで何も知りませんでした。どういうサポートが受けられ、そういう手続きが必要で、費用がどのくらいかかるのか。そもそも介護保険とは40歳から終身、保険料を払い続ける(65歳以上は年金から差し引かれます)保険だということすら認識していなかったのです。
日本人は親の介護に関して「お上の世話になる」のをためらう傾向がありますが、健康保険と同様のシステムなので、必要な場合は積極的に活用すべきですよね。住宅リフォームの補助や介護機器のレンタルetc.も対象になっています。
家族だけの介護はストレスがたまりますが、プロに相談できればマンパワーも情報も格段に違ってきます。ただ、他の公的制度同様、介護保険もあくまで申請主義なので、介護する側が手続きしなければサポートは受けられません。制度の内容を理解しているかどうかで、精神的にも経済的にも負担がずいぶん変わってくると感じました。
先生のお話をうかがって、認知症についても理解が深まりました。胸を突かれたのが、「認知症になっても最後まで感情は残る」ということです。できないことが増えていっても、人としてのプライドはある。たとえば、身内に対しても丁寧な言葉使いをするのは失礼があってはいけないという気持ちからですし、攻撃的になったり、物がなくなったと騒ぐのも自分自身に対する不安の裏返しなのです。いちばんもどかしい思いをしているのは本人なのだと知るだけでも対応が変わってくる気がしました。
老人医療の現場でたくさんのケースを見てこられた和田先生ならではのノウハウがたくさん詰まった1冊。介護保険から施設の種類、認知症への対応、気になる費用の話までひととおりのことがわかる内容です。基本的に1項目が見開きで完結、気になる部分から目を通しやすい構成。電子書籍でもお読みいただけます。
●働きながら、親をみる―自分の人生をあきらめない介護
著者:和田秀樹
価格:1400円+税
発売:2015年5月
[内 容]
もし明日、親が倒れたら―。仕事はどうする? 遠距離だったら? 誰に何を頼めばいい? 介護保険から施設の種類、成年後見人制度、利用できるサービスまで、介護に必要な情報を紹介。いつか必ずやってくるその日のために、早めの知識と対策を。自分の人生をあきらめず、親と双方のを幸せをめざす方法を考える。
[目 次]
第1章 介護離職のリスクに備える基礎知識
―現状を認識し、介護の現実を知る
ほんとうに介護が必要になるのは、85歳以降
「隠れ介護」のビジネスパーソンは1300万人?
孝行息子が危ない 男性シングル介護の現実 etc.
第2章 知っておきたい「介護保険」と「介護休暇」
―仕組みとサービスを理解する
介護保険は親との同居・別居の別なく申請できる
事前準備は地域包括支援センターから
介護休暇と介護休業をフルに活用 etc 第3章 賢い介護施設の選び方と民間サービス
―共倒れを防ぐための対策を考える
離れて暮らす親をどうみるか
施設に入れるその前に ショートステイの活用
民間の有料老人ホームの選び方 etc 第4章 認知症の親との向き合い方
―思い込みや先入観を捨て、怖がらない
高齢者の3人に1人は認知症とその予備軍
知っておきたい認知症の初期サイン
認知症とうつを見分けるポイント etc
第5章 冷静に考えるお金の話 ―親の財産は介護のための大きな資金
知っておきたい親の年金と財産
成年後見制度で財産管理
「リバースモーゲージ」で介護資金をつくる etc
第6章 ほんとうの親孝行を考える
―自分の人生をあきらめず、親の幸せも実現しよう
「介護うつ」で倒れるリスクも考慮する
「在宅介護」と「在宅看取り」を混同しない
親孝行するなら、要介護になる前に etc
〈追記〉
介護関連の書籍を何冊か読みましたが、認知症に関しては下記の本もおすすめです。
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