映画「ワルキューレ」 ― 2009年03月24日 09:02
舞台は第二次世界大戦下のドイツ。独裁的なナチス政権に疑問を抱く、貴族出身のシュタウフェンベルク大佐は、アフリカ戦線で瀕死の重傷を負う。奇跡的に生還した彼は、軍内部で密かに結成された反ナチグループに参加。非常時に発動される「ワルキューレ作戦」と連動する壮大なヒトラー暗殺計画を思いつくーー
政治家を巻き込み、暗殺成功後の政権構想まで考え抜いた、緻密なプランが静かに進行します。体制内にいるからこそ、わかりうる情報や立場は諸刃の剣。露見すれば即、反逆者の汚名を着せられ、家族も危険にさらされます。
誰を味方に引き入れ、誰がいつゴーサインを出すのか。息詰まるような展開が続きます。単なる暗殺計画ではなく、大規模なクーデター構想になっている迫力。結局、隻眼片腕の大佐は名誉の傷痍軍人(左目と右手を失い、残った左手にも三本の指しかなく…)として復帰。ハンディが逆に周囲の警戒をゆるめ、ヒトラーに近づく機会が増えます。そして、絶好のチャンスが訪れるのですが・・・
歴史が証明するように、残念ながら計画は失敗します。思いがけない偶然が重なり、ヒトラーはしぶとく生き延び、いったん発動された「ワルキューレ作戦」は頓挫。関係者は次々と捕らえられ、ある者は自決、ある者は処刑、シュタウフェンベルク大佐は祖国ドイツへの思いを叫びながら、銃殺されてしまいます。しかし、上層部にも反ナチ行動に出た人々がいたという事実はしっかり刻印されました。
これがフィクションではなく、正真正銘の実話であることに、さまざまな思いがめぐります。もし、この計画が成功して(暗殺決行は1944年7月20日)、ナチス政権が崩壊していたら(実際、この9カ月後にはそうなります)・・・第二次世界大戦の終結も早く、ホロコーストの悲劇も少しは食い止められ、日本に原爆が投下されることもなかったかもしれません。それぞれの出来事の歯車が噛み合えば、時代は確実に変わったでしょう。
しかも、それは遙か昔のことではない。歴史に「もし」はないのですが、1人1人の思いが時代を動かし、歴史をつくるのだということもまた、静かに伝わってくる映画でした。
☆ワルキューレ
http://www.valkyrie-movie.net/
監督/ブライアン・シンガー
出演/トム・クルーズ、ケネス・ブラナー、テレンス・スタンプetc.
アメリカ、ドイツ/2008年/120分
2009年3月より、全国ロードショー開催中!
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