夏の京都旅行6〜大河内山荘2009年10月01日 19:07

大河内山荘@京都
腹ごしらえが済んだ後は嵐山の散策へ。まず世界遺産に登録された天龍寺に行ったのですが、桂離宮を参観したあとは広大な庭園にも心惹かれず・・・早々に退散しました。いや、天龍寺、立派なお寺です。でも、う〜ん、観光客に全面オープンな庭園との落差はあまりにも大きく・・・中門近くの池に咲く蓮の花々は印象的でしたが。

北門を出ると、嵯峨野ならではの竹林が広がっていました。昔、訪れた時よりはるかに大きな竹が生い茂り、視界全体が竹・竹・竹。昼なお暗く、坂道や曲がり道も多いので、竹でつくられた長いトンネルの中を歩いているようです。ポーズをとって写真撮影している外人女性もあちこちに。日本人にはかなり違和感を覚える光景でしたが、これぞ、ジャパンならではの風景ですもの。気持ちはわかります(^_^;) 

竹林の中を歩いていくと、大河内山荘に到着。片眼片腕のヒーロー、丹下左膳で一世を風靡した映画俳優、大河内伝次郎の別荘です。外からは中の様子がうかがえないのですが、進んでいってビックリ。広大な山全体が別荘の敷地だったのでした・・・スゴイ、これを個人で?と半信半疑で歩いていくと、山の地形を活かした美しい景色が次々と広がり、さらに驚いてしまいました。

建物自体は月見台のある大乗閣、草庵風の茶室、瞑想にふける時にこもったという持仏堂が点在するぐらいで、さほど大きいものではありません。しかし、この庭園の見事さはどうでしょう。敷き詰められた石や灯籠、木々の配置に至るまで、洗練された繊細な美意識で統一されているのがわかります。一見、自然のままに見えるこの風景をつくりあげるには長い時間がかかり、維持管理にも大変な手間がかかるはず。でも、成金趣味なところはまったくなく、季節のうつろいを心ゆくまで楽しめる本当に美しい山荘です。とても感動しました。

大河内伝次郎はこの山荘に資産の大半をつぎこみ、30年という歳月を費やして完成させたのだそうです。信頼する植木職人(というより造園家かな)と二人三脚で山を造成し、吟味しながら自分の理想の世界を実現したとか。しかし、1人の映画スターがここまで? 莫大な資金力にも目をみはりますが、日本の伝統文化に造詣が深く、素養のある目利きでないとこんな庭園はできないと思いました。一攫千金なバブル紳士などとはまったく違う、お金の使い方。これもまた、生涯を賭けた1つの「仕事」ですよね。

彼は晩年をこの山荘で過ごし、64歳で亡くなるまで庭園づくりに情熱を燃やしていたそうです。本当にこの地をこよなく愛していたのでしょう。しかし・・・思いのほか、高低差が大きくて、足場があやうい所も少なくなく、見学コースの周遊はまるでハイキングのようでした(^_^;) 両親には少しキツかったかも。最後に観覧券とセットになったお抹茶と落雁をいただき、ようやく一息つきました。

写真左上:寝殿造、書院造、数寄屋造、そして民家と日本の全住宅様式を網羅した大乗閣。嵐山をバックに比叡山、大文字、東山三十六峰などが見渡せます。
写真右上:すがすがしく、変化に富んだ散策路。苔や下草、飛び石の1つ1つにまで伝次郎の愛着が感じられます。
写真左下:眼下には保津峡が。右手が百人一首etc.にも詠まれた小倉山。左に大悲閣という山寺が見えます。絶景ですね。
写真右下:映画スター、大河内伝次郎の活躍と生涯を振り返る展示コーナーも設けられています。

☆大河内山荘
http://tabitano.main.jp/7okouti.html
残念ながら建物内は見学できないのですが、休憩所に立派な写真集が置いてありました。内装や建具も素晴らしいようです。

夏の京都旅行7〜修学院離宮2009年10月02日 21:38

修学院離宮
最終日は洛北の修学院離宮へ。今度の旅行でちょっと失敗だったのは、中心部から遠い場所ばかりだったこと。この際、参観許可が必要な場所をまとめてまわっちゃおう!と思ったのですが、「離宮」だから効率よくはまわれない・・・ショッピングや食べ歩きはアキラメざるを得ませんでした。中でも修学院離宮は遠かった。温泉に惹かれて宿泊地を嵐山にしたので、京都を東西に横断する感じ。10時の参観に間に合うか、ひやひやしました。

さて、修学院離宮は、上・中・下、3つの離宮に分かれた非常にダイナミックな庭園です。各離宮の間には棚田や畑が広がり、松並木の道がそれぞれを結んでいます。というか、青々とした水田や野良仕事に励む人々も含めて景観を形づくっているんですよね。村の中にあるというより、村をも包括した大胆な構想。「借景」と呼ぶにはあまりにも壮大なスケールにまず驚かされます。

比叡山に至る山並みを眺め、成長する稲や畑の作物などを見ながら、行幸されたのでしょう。一応、離宮の敷地と周辺の敷地はわかれてはいます。職員さんからは、近隣のみなさまの「ご協力」を得て景観を守っているという説明があり、いちいち鍵で門をあけ、案内してくださるのですが、「近隣のみなさま」であれば、ある程度、自由に出入りできそうな雰囲気(^_^;) ひとまとまりの敷地として囲ってしまわず、人々の営みはそのままに3つの離宮を点在させるという発想がすごいなあと思いました。広大な敷地は約54万平方メートル。東京ドーム約12個分にあたるそうです。

参観のハイライトは、一番高い場所にある上離宮でした。比叡山からの流れを引き込んでつくった巨大な人工池の浴龍池(よくりゅうち)を三段の生け垣でせき止め、大刈込(おおかりこみ)とよばれる50種以上の植木をとりまぜた独特の垣根で覆っています。この池を見下ろす隣雲亭(京都市街が一望でき、本当に空に近い印象)からの眺望は、なんとダイナミックなことでしょう! 大土木工事によって実現したものですが、周囲の森や山々となんの違和感もなく、素晴らしいハーモニーを奏でています。

恥ずかしながら、今まで水面に映る風景の効果をあまり意識したことがありませんでした。池や湖は舟遊びをしたり、地形にアクセントをつけるためにあるという程度にしか認識していなかったのです。が、実際の風景が対称的に映り込むと、緻密に計算された庭園美がさらに引き立つという効果に初めて気づきました。浴龍池は、水面が鏡のような平面になるように、また、美しいさざ波が立つように、あえて浅くつくってあるそうです。池のほとりをめぐりながら、自然の風物を巧みに取り込んだ見事さ、おぼろに映る風景とのコントラストに目を見張りました。

しかし、修学院離宮は、足腰が達者でないとキツイですね。敷地が広いうえ、隣雲亭は京都タワーより高い場所にあるそうですから、昇り坂もかなり長い。桂離宮や大河内山荘も、飛び石を伝って進む箇所や幅の狭い急坂etc.が多く、それなりに健脚でないとつらいでしょう。7月の終わりという季節のせいもあると思いますが、実際、外国人のみなさまも含め、参観者は意外と若く、いつも両親が最年長(70代になったばかり)のようでした・・・今回のコースは、シルバー世代向けだと思いこんでいたのですが、元気なうちに連れて来られてよかった♪

ちなみに修学院離宮を造営した後水尾上皇は、ここが完成した60代半ば以降、公式記録に残るだけで30回以上、行幸されたそうです。しかも、輿などの乗り物は利用されず(地形的にも無理)、ご自身の足で散策を楽しまれたとか。85歳の長寿を全うされ、お子様は30人以上いらっしゃったとうかがいました。いやあ、風流もやっぱり体力ですねえ(^_^;)

しかし、今まで京都と言えば、神社仏閣中心の観光だったのですが、初めて王朝文化の粋をかいま見た気がします。さすが京都、千年の都です。四季折々の風物に親しむ伝統、雅で洗練された美意識は日本人が誇れるものですね。2泊3日でしたが、非常に充実した旅でした。

〈おまけ〉
帰りの新幹線に乗るため、京都駅構内を歩いていたら、皇宮警察による物々しい規制が・・・何事!?と一瞬、緊張しましたが、奈良の高校総体に向かう皇太子さまが到着されたのでした。至近距離でお見かけしたのは初めて。いい思い出になりました♪

写真左上:棚田や畑が広がる田園地帯に3つの離宮が配置されています。
写真右上:エリアごとに設けられた門。滅多に入れない場所に行くんだという期待感が高まります。
写真左中:各離宮をつなぐ松並木。結構、距離があり、昇り坂なのでハイキングコースのよう。
写真右中:水田にはみずみずしい稲が色鮮やかに成長していました。野良仕事をしている人もぽつぽつと。
写真左下:浴龍池を望む、お腰掛。水面に映る景色が美しいですね。英国のチャールズ皇太子&ダイアナ妃もお座りになったそうです。
写真右下:隣雲亭からの絶景。ここまで来ると眺望が急に開け、眼下に浴龍池、遠方に山々を望む壮大な風景が広がります。

☆宮内庁参観案内/修学院離宮
http://sankan.kunaicho.go.jp/guide/shugakuin.html

校友音楽祭の練習22009年10月05日 18:31

昨日は、今月中旬に本番を控えた校友音楽祭の練習でした。学生時代は4年間、混声合唱のサークルにいたのですが、6月から同期の仲間と一緒に卒業以来?年ぶりに歌っています。

☆校友音楽祭の練習(本ブログの過去記事です)
http://officesasaki.asablo.jp/blog/2009/06/15/4366714

先月末から、ご指導いただいていたY先生の練習が始まりました。お年とはいえ(78歳!)まだまだ現役。指揮のひとふりで音の固まりが一気に“音楽”に変わる感動をひさびさに味わいました♪ やっぱりさすが! 楽譜というレシピがあって、材料(私たち)もそれなりでしかないんだけど、お料理する人のアレンジで仕上がりは全然、違ってしまう。練習指揮の後輩クンもがんばっていたのに、今まで何を練習してきたんだろ〜と愕然とするほどでした。あの集中力とスピード感! 学生時代はあんな緊張感の中で毎週、歌ってたのね・・・いやはや、若かった。それになんて贅沢だったことでしょう!

2回目の練習でも、短時間でよりマシにしていく、手際のあざやかさが見事でした。所詮アマチュアなので、テクニックはモチロン、練習時間もまったく足りてないのですが、「ここで切りましょう」「子音を4拍目で収めて」etc.的確かつ思い切りのいい指示で、曲がみるみるうちに輝きを増し、ドラマチックに変わっていきます。方向性が明確だからとても歌いやすいし、充実感もひときわ。早口言葉がつらいメンデルスゾーンの曲も、だいぶドイツ語っぽく聞こえるようになりました(^_^;) 

でも、そういうアレコレが実感できるのは、この年齢になったからかも。Y先生ご自身も昔は冗談の似合わない(?)芸術家肌の方でしたが、今やかなりくだけて、苦笑しつつも(テナーは少ないし、崩壊箇所も点在(>_<)、OBOGにとって“いい思い出”になるよう、つきあってくださってますもの。ホントにありがたいことです。練習はあと1回。なつかしいキャンパスで楽しく歌ってきたいと思います。

フリーランスのためのおしゃべりサロン2009年10月10日 22:55

FOS@神南軒
先日、「フリーランスのためのおしゃべりサロン(FOS)」を開催しました。会場は渋谷の神南軒。以前、長居できるランチの穴場としてご紹介したところです。

☆神南軒のオムライス(本ブログの過去記事です)
http://officesasaki.asablo.jp/blog/2009/03/06/4156722

FOS(「フ」リーランスのための「お」しゃべり「サ」ロンの頭文字です)は、1年ぶりぐらいに会ったデザイナーのG嬢と「フリーランスの場合、機会がないとご無沙汰しちゃうし、ネットワークがタコツボ化する傾向があるので、同じ立場の人たちとリアルに会って、気軽に情報交換&交流したいよね」という話で盛り上がり、じゃ、とりあえず3回ぐらいやってみようかということで実現したものです。

初回は女性限定でおたがい知人に声をかけたら、コピーライター×2、ライター×2、デザイナー×3、イラストレーター、カメラマン、照明デザイナー、ディレクターと多彩な職種の11人が集合。他己紹介しながら名刺交換していくと、初対面同士の方も多かったのに、あっという間に打ち解け、仕事や趣味、ネコの話題etc.が続々登場。とても楽しいひとときでした。

折り悪しく台風襲来で、前日はヒヤヒヤ。参加者に「嵐を呼ぶ女」と言われ、数々のイベントをぶち壊してきたという噂のT女史がいらっしゃるのを思い出しました・・・10月に台風。恐るべし、そのパワー! でも、基本「晴れ女」の私とガチンコだったせいか、夜には雨も上がりました。延期や中止、欠席の連絡がどなたからもなく、みなさん、来ると決めたら来る!という男前さ。さすが修羅場経験の多いフリー。あっぱれな心意気ですね(^_^)

夜景のきれいなテラスバーには出られなかったけれど、台風クーポンで20%OFFのお会計♪というおまけつき。最後はカメラマンYさんによる記念撮影で締め、思い出に残る夜になりました(^_^)v

FOSは、広告・出版・WEBetc.クリエイティブ関連業界のフリーランス女子を中心としたコミュニティ(関連業界にお勤めの方、男性も歓迎!)です。一応、招待制ですので、身近なところからネットワークを広げて、ゆる〜く楽しく続けていければいいなと思います。

高麗隆彦と桂川潤のブックデザイン2009年10月15日 17:01

高麗隆彦と桂川潤のブックデザイン
ダンナの訳書「TATI—“ぼくの伯父さん”ジャック・タチの真実」の装丁をしてくださった、桂川潤さんのブックデザイン展が開催されます。

今回は、哲学、思想書、文学書etc.を中心に数多くのブックデザインを手がけていらっしゃる、高麗隆彦さんとの2人展。硬派で端正な本がたくさん見られそうです。入場無料ですので、お近くにいらっしゃる機会があれば、ゼヒお立ち寄りくださいませ。

●高麗隆彦と桂川潤のブックデザイン
 http://www.commandn.net/new/news.html
講談社刊「現代思想の冒険者たち」の装丁を中心に、アナログ&デジタルのさまざまな技法を共に試みた2人のブックデザイナー、高麗隆彦(長尾信)と桂川潤の仕事を、ゆかりの地・神田で展示します。

 日  時:10月16日(金)〜24日(土)
      12:00〜19:00(入場無料) 
 場  所:プロジェクトスペースKANDADA
 イベント:オープニングパーティ
       10月16日(金)18:00〜
      アーティストトーク「本造りと装丁の現場」
       司会進行:西館一郎氏(青土社編集長)
       10月24日(土)17:00〜

☆桂川潤さんのwebsite
http://www.asahi-net.or.jp/~pd4j-ktrg/index.html
素敵な作品の数々が紹介されています。
(タチ本の装丁)
http://www.asahi-net.or.jp/~pd4j-ktrg/tati.html
http://homepage2.nifty.com/officesasaki/tati/naiyou.html
原書は正方形に近い大判サイズで、写真集のような体裁だったのですが、桂川さんの手によって、タチらしい軽やかな本になりました。カバーをはずした本体もカッコイイんですよ♪

〈追記〉
昨日、行ってきました。予想以上に豊富な作品が並び、充実した内容にビックリ。和紙に手差しオフセットで印刷した非売品、カバーに5つの円を型抜きして著者名をクローズアップしたものetc.、意欲的な作品をたくさん見ることができました。
それに展示が素敵。壁沿いにはお2人の作品が2段に並べられ、中央の平台にもディスプレイ。しかも、すべて現物を手に取って見られるのが素晴らしい。本との出会いは面出しか、平置きで始まるという商品の特性を知り尽くした展示に脱帽しました。
タイポグラフィとビジュアル、紙の質感、本文組や化粧箱etc.、ブックデザインという仕事の幅広さにも感銘を受けました。タチ本も展示作品に入れていただいたのは光栄です(^_^)。とてもいい展覧会なので、お時間がある方はゼヒどうぞ。(2009.10.17)

〈追記2〉
桂川さんのサイトに、会場風景が掲載されています。
http://www.asahi-net.or.jp/~pd4j-ktrg/tp091019.html
ダンナの新著も「最新作」として一番端っこに展示されていました。ご本人にとっても会心の出来映えだったようです(^_^)(2009.10.28)
 ↓
☆Romy─映画に愛された女、女優ロミー・シュナイダーの生涯
(本ブログの過去記事です)
http://officesasaki.asablo.jp/blog/2009/10/27/4656144