夏の京都旅行7〜修学院離宮2009年10月02日 21:38

修学院離宮
最終日は洛北の修学院離宮へ。今度の旅行でちょっと失敗だったのは、中心部から遠い場所ばかりだったこと。この際、参観許可が必要な場所をまとめてまわっちゃおう!と思ったのですが、「離宮」だから効率よくはまわれない・・・ショッピングや食べ歩きはアキラメざるを得ませんでした。中でも修学院離宮は遠かった。温泉に惹かれて宿泊地を嵐山にしたので、京都を東西に横断する感じ。10時の参観に間に合うか、ひやひやしました。

さて、修学院離宮は、上・中・下、3つの離宮に分かれた非常にダイナミックな庭園です。各離宮の間には棚田や畑が広がり、松並木の道がそれぞれを結んでいます。というか、青々とした水田や野良仕事に励む人々も含めて景観を形づくっているんですよね。村の中にあるというより、村をも包括した大胆な構想。「借景」と呼ぶにはあまりにも壮大なスケールにまず驚かされます。

比叡山に至る山並みを眺め、成長する稲や畑の作物などを見ながら、行幸されたのでしょう。一応、離宮の敷地と周辺の敷地はわかれてはいます。職員さんからは、近隣のみなさまの「ご協力」を得て景観を守っているという説明があり、いちいち鍵で門をあけ、案内してくださるのですが、「近隣のみなさま」であれば、ある程度、自由に出入りできそうな雰囲気(^_^;) ひとまとまりの敷地として囲ってしまわず、人々の営みはそのままに3つの離宮を点在させるという発想がすごいなあと思いました。広大な敷地は約54万平方メートル。東京ドーム約12個分にあたるそうです。

参観のハイライトは、一番高い場所にある上離宮でした。比叡山からの流れを引き込んでつくった巨大な人工池の浴龍池(よくりゅうち)を三段の生け垣でせき止め、大刈込(おおかりこみ)とよばれる50種以上の植木をとりまぜた独特の垣根で覆っています。この池を見下ろす隣雲亭(京都市街が一望でき、本当に空に近い印象)からの眺望は、なんとダイナミックなことでしょう! 大土木工事によって実現したものですが、周囲の森や山々となんの違和感もなく、素晴らしいハーモニーを奏でています。

恥ずかしながら、今まで水面に映る風景の効果をあまり意識したことがありませんでした。池や湖は舟遊びをしたり、地形にアクセントをつけるためにあるという程度にしか認識していなかったのです。が、実際の風景が対称的に映り込むと、緻密に計算された庭園美がさらに引き立つという効果に初めて気づきました。浴龍池は、水面が鏡のような平面になるように、また、美しいさざ波が立つように、あえて浅くつくってあるそうです。池のほとりをめぐりながら、自然の風物を巧みに取り込んだ見事さ、おぼろに映る風景とのコントラストに目を見張りました。

しかし、修学院離宮は、足腰が達者でないとキツイですね。敷地が広いうえ、隣雲亭は京都タワーより高い場所にあるそうですから、昇り坂もかなり長い。桂離宮や大河内山荘も、飛び石を伝って進む箇所や幅の狭い急坂etc.が多く、それなりに健脚でないとつらいでしょう。7月の終わりという季節のせいもあると思いますが、実際、外国人のみなさまも含め、参観者は意外と若く、いつも両親が最年長(70代になったばかり)のようでした・・・今回のコースは、シルバー世代向けだと思いこんでいたのですが、元気なうちに連れて来られてよかった♪

ちなみに修学院離宮を造営した後水尾上皇は、ここが完成した60代半ば以降、公式記録に残るだけで30回以上、行幸されたそうです。しかも、輿などの乗り物は利用されず(地形的にも無理)、ご自身の足で散策を楽しまれたとか。85歳の長寿を全うされ、お子様は30人以上いらっしゃったとうかがいました。いやあ、風流もやっぱり体力ですねえ(^_^;)

しかし、今まで京都と言えば、神社仏閣中心の観光だったのですが、初めて王朝文化の粋をかいま見た気がします。さすが京都、千年の都です。四季折々の風物に親しむ伝統、雅で洗練された美意識は日本人が誇れるものですね。2泊3日でしたが、非常に充実した旅でした。

〈おまけ〉
帰りの新幹線に乗るため、京都駅構内を歩いていたら、皇宮警察による物々しい規制が・・・何事!?と一瞬、緊張しましたが、奈良の高校総体に向かう皇太子さまが到着されたのでした。至近距離でお見かけしたのは初めて。いい思い出になりました♪

写真左上:棚田や畑が広がる田園地帯に3つの離宮が配置されています。
写真右上:エリアごとに設けられた門。滅多に入れない場所に行くんだという期待感が高まります。
写真左中:各離宮をつなぐ松並木。結構、距離があり、昇り坂なのでハイキングコースのよう。
写真右中:水田にはみずみずしい稲が色鮮やかに成長していました。野良仕事をしている人もぽつぽつと。
写真左下:浴龍池を望む、お腰掛。水面に映る景色が美しいですね。英国のチャールズ皇太子&ダイアナ妃もお座りになったそうです。
写真右下:隣雲亭からの絶景。ここまで来ると眺望が急に開け、眼下に浴龍池、遠方に山々を望む壮大な風景が広がります。

☆宮内庁参観案内/修学院離宮
http://sankan.kunaicho.go.jp/guide/shugakuin.html