レモンとねずみ2009年04月13日 21:28

レモンとねずみ
2004年に亡くなった詩人、石垣りんさんの文学記念室が伊豆にできたそうです。それを伝える新聞記事を見て、石垣さんの第5詩集「レモンとねずみ」が昨春、刊行されていたことに気づきました。

石垣さんといえば「表札」や「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」などが有名で、言葉は平易なのに、確固とした意志が感じられるきりりとした作品が多いという印象ですけど、この詩集を読むと、今の季節にびったりな次のような詩もあるのですよね。

  たんぽぽ

 土手に咲いた
 たんぽぽが
 綿帽子をかむり
 花嫁の姿で立っています。

 そよ風が迎えにくると
 この春もゆくばかり。
 花のいのちは
 どこへ送られてゆくのでしょう。

 たくさんな種子のうち
 五つ子ほどにもしあわせに
 生まれ出るものと
 そうでないものと。

 飛んでゆく綿毛に
 キラリと光るものは
 太陽の涙です。  

人生や家族に対する辛辣な視線を感じる作品も多いのですが(14歳で銀行に入り、戦後は複雑な家庭環境の中、一家の稼ぎ手として苦労した方でした)、豊かな抒情性が光る表現は美しく、これもまた愛らしくていいなあと思うのでした。

☆レモンとねずみ(石垣りん=詩 童話屋)
http://www.amazon.co.jp/dp/4887470800/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1239579838&sr=8-1
未刊詩40篇、谷川俊太郎さん・茨木のり子さんの弔辞を収録。童話屋さんの詩文庫シリーズは、小型ながらハードカバーの丁寧な造り。控えめな挿画も効いていて大好きです。

☆石垣りん文学記念室
http://dowa-ya-p.blog.so-net.ne.jp/2009-04-01
未完詩全集の企画もあったらしいのに、中止とはとても残念です(>_<)
http://dowa-ya-p.blog.so-net.ne.jp/2009-01-29
http://dowa-ya-p.blog.so-net.ne.jp/2008-09-10