私の男 ― 2008年09月29日 13:00
ずっと気になっていた直木賞受賞作の「私の男」。血のつながりを軸に据えた濃密な物語です。現在から過去へ逆行するサスペンスタッチの構成が秀逸で、読み終えてからまた前に戻って読み返してしまいます。各章が違う語り手となって続いていくループ感もよくて、行き場のない絶望的なストーリーでありながら、どんどん引き込まれ、一気に読み切りました。
近親相姦というタブーをあつかった小説なので、人によってはかなり抵抗があると思いますが、主人公の花、養父の淳悟が寄り添い、求め合い、おたがいだけがいればいいという壮絶な愛の世界には圧倒的な力があります。決して道を踏み外すことのない人たちとは離れた孤独な魂・・・恵まれた境遇にありながら満たされない花の結婚相手・美郎との対比も光っていました。
流氷が流れ着く寒い北の町という設定が物語にふさわしく、暗い海、吹きすさぶ風の映像がはっきりと浮かびます。装幀に使われている絵もシンボリックで、読了したあとに何度も眺めてしまいました。
☆私の男(桜庭一樹=著 文藝春秋)
http://www.amazon.co.jp/dp/4163264302/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1222655224&sr=1-1
☆桜庭一樹さんインタビュー(未読の方は見ないほうがいいかも)
http://books.rakuten.co.jp/RBOOKS/pickup/interview/sakuraba_k/
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