ミツバチの羽音と地球の回転2011年06月18日 12:14


ミツバチの羽音と地球の回転

山口出身のライターMさんと渋谷のユーロスペースへ。おたがい「気になってたんだけど見に行くタイミングがね〜」だったドキュメンタリー映画、「ミツバチの羽音と地球の回転」に行く。

瀬戸内海に浮かぶ山口県の小さな島、祝島。周防灘と伊予灘の間に位置し、貴重な生物が多数生息するエリアは豊かな漁場であり、海の恵みの宝庫だ。ここには28年間も上関原発の建設に反対し続けてきた人々が暮らしている。美しい自然を破壊しないために、次の世代に引き継ぐために、そして何より自分たちの生活を守るために……

カメラは島の暮らしを淡々と映し出す。1000年もの間、受け継がれてきた海の祭り。岩場でひじきを採る人、一本釣りにこだわる漁師、無農薬で大きく実るビワ、手間隙かけた米づくりに励む夫婦、放し飼いにされて土地の開墾に一役かっているブタさんたち、海の幸の新鮮さ、作物のみずみずしさ…。

人間の暮らしが自然の中で成り立っていることがストレートに伝わってくる。対岸の浜辺を埋め立て、高温の排水を海に流す原発の存在は、生活を脅かすものでしかない。

推進派と反対派に分かれた島は高齢化が進む。しかし、島に残り、一致団結して反対運動を続けるおばちゃんたちは、元気で明るい。「電力会社が勝手に振り込んできた金なんか」というおじちゃんたちの心意気。自然を相手に暮らしてきた人たちの強さとまっとうさがまぶしい。知らなかったこと、知ろうとしてこなかったこと、見逃していたものに触れた気がしてなぜか涙が流れてきた。

一方で風力や太陽光など循環型エネルギーの開発に積極的に取り組むスウェーデンの事例が紹介される。電力の自由化が進み、なんと出版社が電気を売り、人々は食品の原料をチェックするように、何からつくられた電気かを確認し、選んで買うことができる。

映画の中で反対派のリーダーは言う。「島の人間だけで原発建設を中止することはできない。しかし、引き延ばすことはできる。時流が変わるのを待つのだ」。2010年春に完成した映画のその後を私たちは知っている。原発の問題は祝島の人たちだけではなく、日本人全体で(地球規模で?)考える現在進行形の課題になった。

深刻なテーマだけれど、ユーモラスな箇所がたくさんあって、登場する人たちの姿に元気をもらえる作品。ぜひたくさんの人に見て欲しい。エネルギー問題に関心がある人はもちろん、原発の立地から遠い都会で暮らす人たちにこそ。

監督/鎌仲ひとみ 日本/2010年/135分
自主上映も続々決定!!